【術後202日】エビでクジラを釣ったバレンタインデー

2月14日はバレンタインですね。コロナのお陰で世間の義理チョコ市場が縮小しているというニュースを目にしました。私には残念ながら甘酸っぱい♡♡の思い出は無いのですが、その代わりと言っちゃなんですがバレンタインが来ると毎年思い出す事件?があります。今日は(ニーズが無いことは承知の上で)そんな思い出を勝手に書き記そうと思います。

現在住んでいるマンションは大変立地も良く、管理も行き届いているので築23年を迎える今も満室。不動産バブルなのか購入代金の倍近い値段でいまだに売りに出されてもすぐに売れたりしている優良物件です。この物件に出会ったのはほんの偶然でした。私はある日、車の点検をするためにトヨタの代理店(その頃VWはトヨタのディーラーが点検を代行してた)に車を預けたのです。2時間くらいかかるので適当に時間潰してください、と言われお散歩がてらプラプラしていたところ、今の物件が新築オープンルームをやっていたのです。その頃マンション購入を検討してた私は早速参考までにと訪問しました。

その時、対応してくれた営業マンMさんは、これまで色々話を聞いたどの営業マンよりも客との距離感・知識・説明が素晴らしく、敏腕であることがうかがえました。その説明といい、物件自身(モデルルームじゃなくて直接部屋を見てるわけですし)いろいろ総合してもこの物件は大変良く、「これは買い」だとピンと来たのです。しかし、なにせマンション。高額な買い物です。ふらっと立ち寄って気に入った、というだけの物件を「これくださーい」って大根じゃないんだから、そう即決するわけにもいきません。「うーん、いいなぁ、欲しいなあ」と悩む私にMさんから衝撃の「実は・・・もうこのマンション、完売してるんです」との告白。

「!!!(やっぱり!)」完売と聞くと急に惜しくなっちゃう私。そんな様子を見て彼は続けます。「でも・・実は、御自分のマンションを売った代金でここを買う、と言ってる方が手付を打ってキープされてる部屋があるんですが、僕の見立てではその方のそのマンションはその値段では多分・・いやまず売れないと思うんです。そうすると手放されると思うので、Dr.ORANGEさんのキャンセル待ちってことで一応そこ、おさえておきましょうか?」と言ってくれるじゃないですか!なんて親切!渡りに船とはこのこと!
私ももうちょっと冷静になって考える時間も欲しいし、と二つ返事で承諾、Mさんに連絡先を渡してその場は資料をいただいて帰宅。冷静になってよくよく考えても、見れば見るほど良い物件。これは・・運命なのか?

そうこうしているうちにMさんから「案の定、部屋がキャンセルになりました」と連絡。その頃には「もうこれ以上の物件はそう簡単には出ない」と結論が出ていた私は購入の意思があることを伝え、契約の手続きの日程を決めたのです。

その日は奇しくもバレンタインデー。
マンションに向かう道すがらそれに気づいた私は「一応バレンタインだし、Mさんいい人だったし、色々お世話になったんだから」とローソンで600円程度のチョコレートを購入。マンションの1室で説明を受け、あちこちたくさんハンコを押して契約を無事済ませたところで「今日はバレンタインなんで。本命チョコです(笑)」と言いながらコンビニ感丸出しのチョコを渡しました。
ビックリするMさん。「・・・・!!」といたく感激している様子。しみじみと「僕・・・長い間この仕事やってますけどお客さんからチョコもらったの初めてです」と。そりゃ良かった、とニコニコする私。そして彼は驚きの言葉を口にするのです。

「Dr.ORANGEさん、実はこのマンション予定よりもずっと早く完売しちゃって。だからこのオープンルームはもう撤収するんです。なので、この部屋の観葉植物やインテリアを入れ替えるための予算が100万円残っちゃって、このお金は僕の裁量で使えるお金なんですが、会社に返すくらいなら、Dr.ORANGEさんのお部屋のインテリアをこのお金で揃えましょう!このカタログの中の好きなもの、100万円分選んでください!」

え、え?100万円?「そんな、そんな、いいですよ。会社のお金でしょ?」と言って辞退しても「いえ!このお金、Dr.ORANGEさんに使ってもらいたいんです!大丈夫です」と強い瞳のMさん。「そ、そうですか・・」とその気迫に押されて玄関の壁に大きい鏡を嵌めこんだり、ウォシュレット(私は使わない派ですけど、蓋が自動で開くから便利)やキッチンと同色のダッシュボード入れたり全部屋にクーラー設置したり・・と十分すぎる設備をちゃっかり追加してもらったのでした。Mさんからは「この件は内緒ですよ♡」と言われましたがもう20年以上前なので時効ってことで。てへ。

600円のチョコがまさかの100万円に化けるという「エビでクジラを釣る」みたいなこの事件。
義理チョコってくだらない、とか意味ない、と馬鹿にする風潮もありますが、情けは人の為ならず(ちょっと違う?)。やはり社会の潤滑油だし、喜んでくれる人もいるし、思わぬ展開を引き起こすこともあるのだ・・と毎年バレンタインデーになるとそれ以降は会うこともなくなったMさんの、噛みしめるように喜んでくれた様子(息子に自慢します!って嬉しそうだった。コンビニチョコなのに)を思い出してちょっとほっこりするのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました