【術後185日】1㎝四方に100万円

「どこにお金を掛けるか、何にお金を使うか?」というのは現代の消費社会においては「自分はどういう人間か?」「自分の価値観」を表すことに等しいと思っています。美容に掛ける人もいるでしょう。ファッション、インテリア、グルメ、タバコ、下着、ギャンブル、旅行、子供の教育・・・色々ですね!私がお金を掛けるのは①ゴルフ➁車③眼鏡④歯。以上!なのです。

歯・・・この一見新庄監督のように”真っ白”なわけでもなく、沢口靖子さんのようにきれいな歯並びをしているわけではない、何の変哲もない様に見える私の歯ですが、実は右の下あごに100万円くらいかかっています(キャー!)。

そう。インプラントです。今を遡ること20年前。昔抜けた銀歯?を放置したために、その穴に向かって左右の歯が倒れてきてややこやしいことになってることはうっすら感じていたのです。最寄りの駅ビルに新しく出来たその歯科クリニックのドアを開け、私より少し年上と思われるK先生の診察を受けたとき、私はピンときましたね。この人はプロだと。いろんな歯医者さんを経験しましたが、K先生は「病院の勤務医」感がハンパなかったのです。歯医者さんが勧める方法はあまり理由を言わず、経験的だったり、(きっとそっちの方が実入りが多いんだろうな・・)という方法を激押しされることが多いのですが、K先生は学術的で、コストよりも本当に医学的な見地、必要性から説明していることがプロ同士ピンときました。聞けば、直前まで某有名総合病院の口腔外科勤務だったと。やっぱり!!

K先生は「これは・・結構厄介ですねえ。結構時間かかりますよ」と治療計画を説明してくれました。まずは左右から寄りかかってきている歯をぐぐぐっと外に戻して、そこに歯を入れる。その方法としてはブリッジ(左右の歯を土台にして歯を作る)か、インプラント(人工歯根を下あごに埋め込んで、それを土台にして歯を嵌める)にするかの二択。
K先生のおすすめはインプラント。今でこそメジャーな治療法ですが、まだ20年前はまだ走りというか最先端。勇気が必要でしたが、お金も手間もかかるけど、左右の歯の負担が少ないインプラントを選択しました。

これがブリッジ。左右の歯に負担がかかる
これがインプラント。銀色部分が人工歯根。

いやいや、大工事!放置してた私が悪いんですけど、倒れこんできてる歯を戻すだけでも結構時間がかかったし、歯茎を貫通して下あごに穴開けて金属の釘を打ち込んで、その上にオーダーメードの歯を嵌めるなんて大工事やん。アゴって脳に近いじゃないですかぁ涙。そこに穴開けるって!もちろん麻酔はするけどゴゴゴゴ、ガンガン、ドドドドって脳のすぐ近く、アゴにもダイレクトに衝撃を感じるわけなので、ぎゅって目をつぶって、両手をお祈りするみたいに握って耐えたのを覚えています。今思えば、この狭い幅に適切な深さと角度で穴を開けるって結構技術要りますよね。トラブルが多いのもうなずけます。お金は確か全部含めて7-80万円(もしかしたらそれ以上)かかりました(保険適応外)。ホント、怖かったし大変でしたけど、歯は一生モノですからね。まったく惜しくありませんでした。K先生の確かな技術のお陰かその後は快適そのもの。何の問題もなく楽しく過ごしていました。

でもまあ、そういう特殊なブツがはいってますので、時々メンテに通院していたのですが・・今から約5年前。区の歯科健診次いでに「ちょっとインプラント付近にネギとか挟まるんですよね~」と軽い感じで伝えたところ「Dr.ORANGEさん、お話があります」と改まった口調のK先生。「は・・はい、なんでしょう・・」「実は、最近学会でインプラントの長期予後として、人工歯根が入っている(アゴの)骨が少しインプラントを中心に反って(そって)しまう人がいることが報告され始めているんです。残念ながらDr.ORANGEさんにもそれが生じていて、その(骨が反ってる)せいでインプラントと左右の歯の間に隙間があいて、そこにネギとかが挟まってしまい、将来的には(インプラントは虫歯にならないけど)左右の歯が虫歯になってしまいます。この副作用は最近判明したので最初に説明した時点でお伝え出来ていませんでした。すみません」と謝ってきたのです。

そんなこと!新しい技術や治療が出てきて、時間が経つと予想外の副作用(長期予後)が発見されるなんて、よくあること・・というか当たり前。むしろ学会にちゃんと行って知識をアップデートしてる感じで好感度爆上がり!
・・じゃあどうるするかっていうと、人工歯根はもう骨と一体化しているので、その上の歯の代わりに(隙間の分)大きくした(逆台形にした)歯を作って付け替えればいいわけです。とはいえ、元の歯を取るのだって、新しい歯を作るのだってまたお金がかかるわけですからまた何十万円もかかっちゃうわけで。確定申告ではしっかり控除してもらいましたけどね!というわけで合計100万オーバーが私の口の中、右下の1㎝四方に埋まってるわけです。銀座の鳩居堂前(日本で最も高い土地)もびっくりです。

さて。今日は土曜日ですが、夕方から当直(このブログは当直中に書いてます)。そんな日はゴルフも出来ないので歯のメンテナンスチャーンス!しっかり歯を磨いて朝イチの受診に向かいます。(後から聞いたら千葉は雪でクローズするゴルフ場もあちこちにあったとの情報が。ごめんね、私がゴルフしなかったばっかりに・・)


K先生に「最近、冷たいもの食べると左上の歯がシミるんですけど」と伝えると、「うーん・・・虫歯、じゃないですね。ちょっと歯茎に炎症があるだけです」と。良かったー♡今日の診察では虫歯は無いものの、ちょっと歯茎の炎症がところどころあることと、歯の裏に磨き残しからの歯石がありますと言われました。歯石除去と歯磨きの指導、睡眠中に使うマウスピース(歯ぎしりしてるらしくて、歯を守るために毎晩嵌めてる)の交換をすることになりました。
K先生にマウスピースの型を取ってもらった後は、めちゃくちゃ可愛い歯科衛生士さん?から歯磨きの指導。「一度、どんなふうに磨いているかやってみてください」と歯ブラシと手鏡を渡されていつものように歯をごしごし。彼女は低い声で「あぁっ・・」と小さく叫んだあと、「ちょ、ちょっと強いですね」と。「え?そうなの?じゃあこれくらい?」「まだまだ強いです!」「え?じゃあこれくらい?」「ひーまだ強いですー!」と。
お姉さんは歯ブラシをそうっと歯と歯茎の間に斜めに当ててそよそよと動かします。撫でてるだけですけど!そんなに優しく?!と驚く私。
大事なことは擦るのではなく歯ブラシの先を隙間に入れて汚れを掻き出すことなので、むしろ優しく歯と歯茎の間に差し込んでいくイメージなんですよ、とマスクの上で美しくカールしたまつ毛をぱちぱちさせてにっこり微笑むお姉さん。知らなかった・・・

美人さんにニッコリされちゃったらなんだかウキウキしちゃって、質問を探す私(おっさんか)。「あの・・・歯磨き粉って、泡立つのと泡立たないタイプがある気がするんですけど、こんなに優しく磨くなら、シャンプーや洗顔みたいに泡立つやつで磨いた方が歯に優しいんですか?」という私のアホな質問には「そうですね。泡立つ歯磨き粉には発泡剤が入ってるんです。効果は同じなんで、自分が好きな方でいいんですよ」と優しく明快に答えてくれるお姉さん。続いて前歯の裏や、奥歯の奥の磨き方も教えてもらって、歯石除去とフロスと研磨にうつります。お姉さんが上から大きなお茶碗くらいの大きさのでかい羽根つきの網みたいなのを下ろすと(コロナで国からの補助金で購入したエアロゾルを吸引する装置らしい)、私の口の前でゴゴォー!!と音を立てて空気を吸ってます。すごい音量なのでみんな大嫌いなあの不愉快なキュイーン・・・という金属音があんまり聞こえなくて良き。
こんな強力な吸引機があれば口が臭い患者さんのオイニー(臭い)も大丈夫だね、さぞかしストレスも減ったんだろうな。良かったねお姉さん・・などと勝手にココロの中でお姉さんをねぎらったりしてるうちに終了。

歯科の診察台。このテレビモニター、何を映すんだろ?
受付にはたくさんの歯ブラシと歯磨き粉、マウスウォッシュが。

口の中は小宇宙。ここも本当に専門職だよなぁ。一生美味しくご飯を食べるためにも、歯のメンテナンスはしっかりしていこう、とココロに誓い、K先生と歯科衛生士のお姉さんは大事なチームオレンジの一員だよ!・・とツルツルになった歯の裏を時々舌で舐めながら天気の良い土曜日の繁華街をプラプラ帰ったのでした。

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